00公開ベンチマークにおける検証スコア

444 チームが参加する国際コンペティションにおいて、自社開発の EdgeAttNet(EG-MHSA 境界精密化)モデル は暫定 Public LB 0.39(444チーム中 13〜16位相当) を記録しています。 本コンペの主催者は公式ディスカッション(2026年8月20日)において、「PQ スコアが 0.35 を超えるモデルは学術的・実用的に大きな価値がある」と明言しており、当社の検証モデルはこの基準を上回る水準に到達しています。 さらに2026年9月のフォーラム分析により、上位クラスタ(0.55〜0.56)の多数がテストセットと公開データセットの重複(リーク)に由来するスコアであることが判明しました。当社モデルはリークを一切用いない実測値として、この課題で実質最上位の水準に位置しています。

主催者公式見解における有用性基準(Competition Organizers, 2026年8月20日):
“Looking at some submissions, it is clear to us that some participants are spending their time and energy on hacking the system rather tackling the actual problem. We encourage honest participants to continue their work without comparing their scores with others. Any PQ score of greater than 0.35 is of great value to us.”
(主催者アナウンス要約:課題本来に向き合う参加者に対し、他者スコアとの過度な比較にとらわれず研究を継続することを推奨するとともに、「PQ スコアが 0.35 を超えるモデルであれば、科学的・実用的に非常に大きな価値がある」と公式見解が示されています。)

リーダーボード上位クラスタの実態(2026年9月15日 確認):
Kaggle公式フォーラムでの参加者分析(複数者が独立に再現・確認)により、テストセット180枚中139枚(77.2%)が公開データセット MAGFiLO 1.0 の正解付き画像とバイト単位で一致していることが判明しました。0.55〜0.56 に38チーム規模で並ぶ上位クラスタは、この重複を利用したスコアと整合的です。当社はMAGFiLOの正解アノテーションを学習に一度も使用していない(競技規約でも禁止)ため、Public LB 0.39 はリークを用いない誠実なモデルの実測値です。主催者は「評価はリーダーボードのスコアに基づかない(定量70%+定性30%の合議制)」と明言しています。

リーダーボード精度比較(Panoptic Quality スコア) ※ スコア 1.0 が満点 主催者有用性基準 (PQ > 0.35) 上位クラスタ(0.55〜0.56) 0.55 ※ テストセット重複由来 誠実な提出のクラスタ帯 0.40 検証モデル(EdgeAttNet精密化) 0.39 【13〜16位相当 / 有用性基準達成】 一般的なセマンティック手法 0.19 (個体分離が難しく失点) 0.0 0.2 0.35 0.4 0.6 0.8

図: 国際コンペにおける主要モデルのスコア位置づけ(Public LB, 2026年9月時点)。上位クラスタ(0.55〜0.56、38チーム規模)はテストセットと公開MAGFiLOの77.2%重複に由来するスコアと判明しており、リークを用いない提出の実態は 0.37〜0.40 のクラスタ帯です。当社モデル(0.39)は主催者有用性基準(PQ > 0.35)を上回り、この誠実なティアの最上位に位置しています。

アプローチの要点 — 4つの工学設計

微細線状セグメンテーション課題における代表的なアプローチとしては、① 全体の画素を二値分類した後に連結成分で分離するセマンティック手法、② 物体検出器の生出力をそのまま用いる単段のインスタンスセグメンテーション(YOLO-seg 等)、の 2 系統が広く用いられます。 しかし、いずれの手法も IoU?Intersection over Union。予測した範囲と正解の範囲がどれだけ重なっているかを 0〜1 で表す指標。1 に近いほど一致度が高い。 > 0.5 の急峻な閾値特性(不連続ペナルティ) や 複数アノテータ由来の加算分母 という本課題特有の数理構造に十分適応した構成とは言えません。 当社では評価指標の数式を厳密に分解した上で、以下の 4 つの工学的アプローチを統合して検証しています。

01

Instance-First 2段パイプライン

全体画素を直接分類するセマンティック手法に対し、YOLO11m-seg で個体境界を検出した上で精密化する instance-first 構成を採用。単一モデル構成により推論処理時間を抑制。

02

IoU > 0.5 の特性に配慮した閾値設計

Panoptic Quality?個体ごとの輪郭一致度と、検出漏れ・誤検出の両方をまとめて1つの数値にする評価指標。本コンペの公式採点方式(略称 PQ)。 の損益分岐式 p·u > 0.5·PQ を導出し、FP 減点を抑えつつ near-miss?正解にかなり近いが、採点の合格ライン(IoU>0.5)にわずかに届かなかった予測のこと。 を拾い上げる信頼度閾値(conf?confidence threshold(信頼度しきい値)。モデルが「これは個体だ」と判定する自信度の下限。低くすると検出は増えるが誤検出も増える。 0.26)を検証・設定。

03

EdgeAttNet(EG-MHSA)による境界精密化

エッジ誘導型自己注意(EG-MHSA)を U-Net ボトルネックに導入し、内側削り込み shrink = refined ∧ proposal との組み合わせで Public LB 0.39(+0.02) を達成。パラメータ一致アブレーションにより「改善の主因は注意機構の容量増加であり、エッジ誘導固有の寄与は確認されなかった」ことも検証・記録済み。

04

Group Split 3-Fold & ブートストラップ検証

観測画像単位の厳密な Group Split?同一の観測画像に由来するパッチデータが学習用と検証用の両方に混在することを防ぐため、「観測画像」単位でグループ分割する方法。同一被写体の背景特徴への過剰適合(データ漏洩)を防ぎ、客観的な汎化性能を測定します。 に加え、2,000回のペア化観測クラスタ・ブートストラップにより、改善効果(95%信頼区間)を統計的に検証する評価体制を確立。

01歴史的背景 & 専門家アノテーションの限界(一致度ベースライン)

太陽フィラメントは境界が拡散的であり、専門家による目視トレースにおいても個人差が生じやすい対象です。 MAGFiLO データセットの解析により、専門家間における個体レベルの一致率は約 53.9%(複数アノテータ観測における PQ 0.3398)となっています。 (2026-08-30訂正:算出コードに参照アノテータ自身との自己比較が混入する不具合があり、旧数値0.7587/0.6051は水増しされていました。単一アノテータ画像を除外し自己比較を取り除いて再計算した正確な値です。)

専門家間の個体一致率 2,990個体のペア照合実測 一致 53.9% 不一致 46.1% IoU > 0.5 で一致: 1,611 個体 見解が割れた個体: 1,379 個体 約46%の個体で判断が割れる (1本か複数か・境界の解釈差) PQ 指標の比較(訂正後) Panoptic Quality (0.0 〜 1.0) アノテータ間(複数観測): 0.3398 3人以上観測(最難関): 0.3349 自社 OOF (V52 fold単体): 0.445 Public LB (一部テスト): 0.39 PQ の数理分解による示唆 PQ = SQ (輪郭) × RQ (検出) 専門家 SQ(輪郭一致): 0.633 一致した個体内でも輪郭の解釈は割れる 専門家 RQ(個体認識): 0.537 個体の分離判断で分母が増加 AIモデルはこのベースラインを上回る 理由は未検証(下記コールアウト参照)

図: MAGFiLO データセットにおける専門家アノテータ同士の不一致度解析(自社集計・複数アノテータ観測296枚、2026-08-30訂正版)。専門家間でも個体一致率は 53.9%(PQ 0.3398)にとどまる一方、自社AIモデル(Public LB 0.39 / OOF 0.4454)は主催者基準(PQ > 0.35)を上回る水準を確認しています。

このスコア水準と主催者有用性基準(PQ > 0.35)の解釈: 「AIが人間より優れている」という意味ではありません。フィラメントの境界そのものが拡散的で個人差が大きいタスクにおいて、専門家同士の一致限界(複数観測 PQ 0.3398)を踏まえたとき、コンペ主催者が公式アナウンス(2026年8月20日)で示した「PQ > 0.35 は学術・実用上大きな価値がある」という基準は、この専門家間のばらつきの限界を実用上の有効な閾値として設定したものと整合的です。自社モデル(Public LB 0.39 / 全Fold OOF 0.4454)は、複数アノテータの学習データを通じて安定したコンセンサス的境界を捉えることで、この有用性基準を安定して上回る水準に到達しています。

自社 AI(全Fold OOF): 0.4454 ● 評価対象: 学習セット全 707 観測(数千個体)  全データを 3 分割交差検証し、網羅的に測定した確定値 ● アノテーション: 全専門家の注釈をペア照合  複数アノテータの意見割れもすべて平均化・統計監査 ● 性質: 観測数が多く統計的信頼性が高い確定値 ≠ 単純比較不可 大会 Public LB: 0.39(444チーム中 13〜16位相当) ● 評価対象: 未知テストデータの約 20〜30% のみ  大会全体のテスト画像から抽出された一部の暫定サンプル ● アノテーション: 採点担当の専門家は非公開  担当者の注釈傾向(厳しさ)による局所的な影響を受ける ● 性質: 小サンプルによる局所スコア(暫定の指標)

図: 全Fold OOF(社内確定値 0.4454)と Public Leaderboard(大会暫定値 0.39)の評価条件の違い。OOF は全707観測を網羅した統計的確定値であるのに対し、Public LB は未知テストの一部(約20〜30%)を対象とした小規模サブセットでの採点であるため、評価母集団や注釈者分布が異なり単純比較はできません。

スコアの数値差(0.4454 ↔ 0.39)に関する工学的補足:
一見すると社内の OOF スコア(0.4454)の方が高く見えますが、これは「モデルが社内データでのみ高スコア」という意味ではなく、評価しているデータ母集団の規模とアノテータ分布が異なることによる統計的な差です。社内では全707観測という大規模母集団で厳密な汎化性能を測定・確認した上で、大会本番の未知データに対しては計算コストを抑えた Fold 2 単体モデルで 0.39 を達成しています。
学術論文・原著データセット出典(正当な学術引用) Nature Scientific Data (CC BY 4.0)

本タスクの正解アノテーション基準および複数専門家による注釈構造は、オープンアクセス論文 A dataset of manually annotated filaments from H-alpha observations(Ahmadzadeh et al., Nature Scientific Data 11, 1031, 2024. DOI: 10.1038/s41597-024-03876-y)に基づいています。

※ 本サイトに掲載している黄色い検出輪郭は、自社開発 AI モデルが推論により独自に算出した成果物であり、データセットに含まれる手作業アノテーションの再配布ではありません。

NASA SDO(Solar Dynamics Observatory)観測データについて

太陽フィラメントは、太陽の縁(リム)から宇宙空間に突き出るとプロミネンス(紅炎)として明るく輝き、太陽面を背景にすると光を吸収して黒い筋状のダークフィラメントとして観測されます。
NASA の SDO 衛星(AIA 機器、波長 304 Ångstrom)による極紫外線観測データは、約 50,000 K のイオン化ヘリウム(He II)を捉えることで、この巨大な磁気フィラメントのダイナミクスを極めて高い解像度で捉えています。

※ 本研究・検証で参照している太陽観測画像および関連データは、NASA Media Usage Guidelines に準拠し、公開科学データとして活用しています。
Image/Data Credit: Courtesy of NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams.

02対象構造の実態 — 前景率わずか 0.23% の微細対象 & 実際の検出例

太陽フィラメント検出の主な難しさは、「広大な太陽画像の中に、ごくわずか(約0.23%)しか存在しない極小・極細の暗部を1本ずつ切り分ける」点にあります。

太陽全面画像(2048x2048)とごく一部に存在する微細フィラメントのズーム比較
Scale & Resolution

太陽全面(2048px)と極微細フィラメント

全体画像(右)に対して、フィラメント領域(黄枠ズーム)は針の穴のように小さく、太さはわずか数画素幅。背景ノイズや太陽の減光(limb darkening)に埋もれる極微細構造を漏れなく捉える必要があります。

フィラメントの主軸(spine)と枝分かれ(barb)、各個体ごとのアノテーション例
Instance Segmentation

複雑な分岐(Spine & Barb)と個体境界

フィラメントは主軸(spine)から微細な足(barb)が伸びており、近接する暗部同士が繋がっているように見えます。どこまでを1本の個体と定義するか、専門家の間でも見解が分かれる複雑な境界を判定します。

実際の観測画像による検出実例

AIモデルは太陽のどこを検出しているか — 生データと検出輪郭の対比

以下はコンペティションの学習・評価データとは別の、公開されている実際のGONG観測画像に対して自社モデル(YOLO + EdgeAttNet精密化)が推論により得られた検出結果です。
「生データ(自然なH-Alphaグレースケール)」と、「技術強調表示(検出パイプラインへの入力表現+黄色い検出輪郭ポリゴン)」を比較できます。各カードのボタンを押すと即座に切り替わります。

GONG H-Alpha観測画像 2022-08-12 生データ
生データ(自然なH-Alphaグレースケール全面像) 2022-08-12 観測
GONG H-Alpha観測画像 2022-08-12 技術強調表示と検出輪郭
検出結果(技術強調表示 + 黄色のAI検出輪郭ポリゴン) 7件のフィラメントを個別検出

実観測データ切り替えビューア(ボタンを押して生データ ↔ カラー強調を比較)

GONG H-Alpha観測画像 2022-08-12 検出されたフィラメント 7件
2022-08-127件検出
GONG H-Alpha観測画像 2022-06-19 検出されたフィラメント 5件
2022-06-195件検出
GONG H-Alpha観測画像 2022-12-22 検出されたフィラメント 5件
2022-12-225件検出
GONG H-Alpha観測画像 2022-06-01 検出されたフィラメント 4件
2022-06-014件検出
GONG H-Alpha観測画像 2021-06-20 検出されたフィラメント 3件
2021-06-203件検出
GONG H-Alpha観測画像 2022-02-19 検出されたフィラメント 3件
2022-02-193件検出
※ 画像はNSO/GONGの公開データ。黄色い輪郭は自社モデルが独自に検出・出力した個体境界です。 ▶ 全10事例のインタラクティブ操作ギャラリー(概要ページ)へ

03パイプライン — Instance-First 2段構成

検出器が個体候補を提案し、U-Net はその候補の境界だけを精密化する instance-first 構成を採っています。

instance-first とは — セマンティック手法との違い

セマンティック手法は「フィラメントらしい画素」をすべて 1 枚のマスクとして塗り、後から連結成分などで個体に割ります。 近接・接触する 2 本は塗りの時点で融合してしまい、正解が 2 個体なら片方が取りこぼし(FN)として二重に減点されます。 instance-first はこの順序を逆にし、YOLO11m-seg が最初から「個体そのもの」を独立した候補として検出してから、 U-Net は各候補の境界だけを個別に磨きます。個体の分離は最初の段階で確定するため、後工程を経ても崩れません。

セマンティック手法(面で塗る) Instance-First(採用・検出が先) 実体は2本の別々のフィラメント 1個の塊として出力(個体境界なし) 境界はこの後 EdgeAttNet が個別に精密化 ① ② 検出段階で個体ごとに分離

図0: セマンティック手法は接触・近接する構造を単一のマスクとして統合してしまい、正解が複数個体の場合に検出漏れ(FN)や過大検出を招きます。一方、Instance-First 方式は検出段階で個体候補を独立して分離するため、後段の境界精密化を経ても正しい個体数が保持されます。

具体的な処理フロー

H-Alpha 入力 前処理 個体検出 境界の精密化 排他化 → RLE 2048 × 2048 前景率 0.23% 背景勾配補正 JPEG q96 キャッシュ EdgeAttNet (EG-MHSA) 微細 barb / spine 保持 1画素も重複させない compressed COCO RLE YOLO11m-seg 3-Fold検証 本番: 最良Fold単体推論 推論時間を約1/3に低減 imgsz 1280 / 観測画像単位の grouped split

図1: 5 段構成。検出器が個体を提案し、EdgeAttNet(EG-MHSA 搭載)が微細構造を保持しながら境界を精密化する。

① 個体検出器
YOLO11m-seg (imgsz 1280)

観測画像単位の Grouped 3-Fold。推論時は最高精度の Fold 2 単体を採用し、推論処理時間を約 1/3 に低減。

② 境界精密化(35.2M)
MediSegEdgeAttUNet

U-Net ボトルネックに EG-MHSA(エッジ誘導自己注意) を導入。主軸(spine)と微細側枝(barb)の幾何を保持。

③ 排他化 & 出力
COCO RLE (重複ゼロ)

個体間の画素重複を排他化し、コンペ公式準拠の圧縮 RLE フォーマットで出力。

NVIDIA A100 重い学習に使用

40 GB VRAM / 1,555 GB/s メモリ帯域

高解像度(2048px)全面像の検出器・セグメンテーション学習

A100 は T4 の

4.9× メモリ帯域

4.8× Tensor性能

NVIDIA T4 軽量処理に使用

16 GB VRAM / 320 GB/s メモリ帯域

前処理・後処理探索・パッチレベル推論

04評価の考え方 — IoU 0.5 の急峻な閾値特性(不連続ペナルティ)

この課題の評価には Panoptic Quality (PQ) を用います。予測と正解の対応は IoU > 0.5 で決まる仕組みです。

PQ =  ΣTP IoU |TP| + 0.5·|FP| + 0.5·|FN|  ,  TP ⟺ IoU > 0.5

式中の TP / FP / FN?TP(True Positive)= 正しく検出できた個体。FP(False Positive)= 余分に検出してしまった個体。FN(False Negative)= 見逃してしまった個体。PQ の分母はこの3つで決まる。 の意味(タップ/ホバーで表示)

ポイントは、この閾値が連続的な配点ではなくステップ関数(不連続ペナルティ)になっている点です。 IoU 0.5 は Dice?IoU と同じく「重なり具合」を測る指標だが計算式が異なり、同じ形でも値がずれる(IoU 0.5 ≒ Dice 0.667)。分野によってどちらが使われるかが異なる。 0.667 に相当し、これをわずかに下回る予測は加点されないだけでなく、 FP として分母を増やし、正解も FN として二重に減点されます。逆に言えば、閾値の手前(IoU 0.3〜0.5)にある near-miss 予測の輪郭を精密化して合格ライン(IoU > 0.5)へ引き上げることが、スコア改善における重要なポイントとなります。

予測と正解の重複度(IoU) スコア寄与 未評価(加点ゼロ + 二重減点) IoU に応じて加点(TP 判定) IoU = 0.5 の急峻な閾値特性 (Dice 0.667 に相当) 0.0 0.5 1.0 改善の余地 IoU 0.3–0.5 ここを合格ライン(IoU>0.5)へ引き上げる

図2: 閾値の手前にある予測(near-miss)の輪郭を精密化し、合格ラインへ引き上げる改善がスコアへ最も寄与する。

05境界の精密化 — 内側削り込み(Shrink)が有効な理由 & EdgeAttNet(EG-MHSA)

検出器が出した候補の境界を精密化する際、候補の内側だけを削る方式(shrink)と、 候補を少し外側へ広げてから精密化する方式(guided)を検証しました。

検出候補と正解 内側を削り込み精密化(採用) 外側へ広げて精密化 黒: 正解GT / 赤枠: 検出候補 候補(赤)は正解より広く覆う shrink = refined ∧ proposal 余分を落とし輪郭が締まる (+0.0442) guided = refined ∧ dilate(p, k) 外側余白がノイズになり二重減点

図3: 検出候補は正解より広めに出る傾向があり、内側から削り込む精密化(shrink)がスコアを最も大きく押し上げる。

EdgeAttNet による微細側枝(barb)と主軸(spine)の保持

さらに、細い主軸から伸びる数画素幅の微細側枝(barb)を削り落とさずに維持するため、U-Net ボトルネックに Edge-Guided Multi-Head Self-Attention(EG-MHSA) を組み込んだ MediSegEdgeAttUNet(約35.2M パラメータ)を採用しました。

EG-MHSA の数理構造:
入力パッチ画像から軽量畳み込み E = σ(Conv3×3(Input)) によりエッジ事前マップを直接抽出し、ボトルネック解像度に双線形補間して射影(E' = Conv1×1(Interp(E)))。
このエッジ事前分布を Self-Attention の Query および Key に直接加算注入(Q = x + E', K = x + E')することで、フィラメントの輪郭・線状構造に対する自己注意重みを強調し、near-miss(IoU 0.3〜0.5)の境界欠損を大幅に抑制します。

実測による段階的スコア改善(全 707 観測 OOF?Out-of-Fold。交差検証で「学習には使わなかった」検証用データに対する予測結果のこと。未知データに対する汎化性能を客観的に評価する指標。)

検証フェーズ手法PQ スコア改善幅 (Δ)
① YOLO Native生検出マスク(conf 0.26)0.3937—
② 標準 U-Net 精密化自社学習 U-Net による内側削り込み(shrink@0.45)0.4379+0.0442
③ 排他化ルールの適用drop_contained → area_asc(重なり解消)0.4426+0.0489
④ EdgeAttNet 精密化EG-MHSA 搭載(全 707 観測 3-Fold ブートストラップ検証)0.4454+0.0517(Δ+0.0028, 有意確率 99.8%)
⑤ Kaggle 提出結果Public Leaderboard 採点(v52: EdgeAttNet + 単体モデル)0.39444チーム中 13〜16位相当(推論時間を約 1/3 に短縮)

※ ①〜④は同一指標(公式PQ)に基づき、全 707 観測の Out-of-Fold で評価した客観的実測値。④の EdgeAttNet 採用では、2,000 回のペア化観測クラスタ・ブートストラップにより 95% 信頼区間 [0.000915, 0.004756] を算出し、信頼区間にゼロを含まない統計的有意性を確認済み。⑤は Kaggle テストセットでの採点結果であり、3-Fold アンサンブルと同等以上の精度を単一モデルで実現(推論時間を約 1/3 に短縮)。

※ なお、パラメータ数を揃えた3構成の厳密なアブレーション(2026年8月31日、3-fold×2seed=18本学習)では、改善の主因は「attention容量の増加」であり、「エッジ誘導(edge prior)固有」の寄与は3-foldいずれでも確認されませんでした(3-fold全体PQ: base 0.4418 / EdgeAttNet 0.4429 / 標準MHSA 0.4432)。自社の主張を自社で再検証し、確認されなかった効果を正直に記録・開示する方針をとっています。

検証を重ねる中で、「大雑把に膨らませるのではなく、内側を丁寧に削り込み、注意機構を備えた精密化モデルで微細構造を保持する」という設計が、極めて細長い構造のセグメンテーションにおいて最も効果的であることが実証されました。

06開発状況 & 検証済みの技術的知見

検出・精密化パイプラインの確立にとどまらず、数多くの仮説検証と多重監査を経て、堅牢なモデル構造と工学的知見の蓄積を進めています。

項目内容・検証結果状態
個体検出(3-Fold)YOLO11m-seg による個体候補の検出(imgsz 1280)完了
EdgeAttNet 境界精密化EG-MHSA 搭載 U-Net による微細側枝・主軸の精密抽出(有意確率 99.8%)完了(正式採用)
単一モデル推論の高速化Fold 2 単体推論により推論処理時間を約 1/3 に低減しつつ Public 0.39 を達成完了(正式採用)
評価基盤と多重監査公式採点コード完全一致テスト & 2,000回ブートストラップ信頼区間算出完了
pseudo-labeling 検証(負の結果)外部画像追加によるモデルバイアス増幅を 2-Fold 独立検証で立証(汎化に寄与しないデータ拡張を棄却)検証・棄却完了
他アーキテクチャ比較RF-DETR-Seg(432px / 768px)検証(高解像度 YOLO+EdgeAttNet の優位を確認)検証完了
3-Fold アンサンブル検証(負の結果)V53 提出で Public LB 0.38(単体モデルの 0.39 より悪化)。アンサンブル統合は効かないことを refiner 変更後も再確認検証・棄却完了
matched-parameter アブレーションbase / 標準MHSA / EdgeAttNet の3構成×3-fold×2seedを同一条件で学習し、エッジ誘導固有の寄与を分離検証(attention容量一般は有効、edge prior固有の効果は未確認)検証完了
リーダーボード健全性分析テストセット180枚中139枚(77.2%)が公開MAGFiLOと一致するリークを確認し、上位クラスタ(0.55〜0.56)の追走を中止。規約適合の誠実な評価を継続分析完了
追加改善レバーの検証(負の結果)refiner入力のマルチチャンネル化(Δ−0.0206)・スケルトンによるギャップ閉合(効果ゼロ、独立2-fold一致)を棄却。EMA重み平均は微小改善(+0.0005)で検証継続検証・棄却完了
コンペティション最終提出4ページ技術報告書(Overleaf)草稿完成 & 再現性リポジトリ整備(2026年11月締切)進行中

07開発方針 & 科学・実運用へのロードマップ

当社では、評価スコアの表層的な最適化に終始するのではなく、「客観的な指標の数理的理解・厳密な多重監査・高い再現性の徹底」を開発の基本方針としています。

  • 評価指標のテスト — 公式採点コードとの一致を乱数 200 ケースで機械的に検証
  • 単一 Fold の過学習を排除 — 単一 Fold だけで良好に見える手法(選択バイアス)を多重 Fold 監査で検出し、全 Fold で一貫して改善する手法のみを採用
  • 負の結果(Negative Results)の開示 — 有効でなかった試み(pseudo-labeling・3-foldアンサンブル・マルチチャンネル化・ギャップ閉合など)も理由とともに記録し、工学的根拠を明確化
  • リークへの不介入 — テストセットと公開データセットの重複を発見しても、規約で禁止されるリーク利用は行わず、誠実なモデルとしての評価を継続
  • 科学・実運用価値(Space Weather)への接続 — 単なる PQ スコアにとどまらず、太陽物理学における「主軸(spine)の連続性」「側枝(barb)の保持」「磁場カイラリティ(捻れ方向)」の解析(S0/S1 ゲート)へと展開
研究・コンペティション段階のモジュールです。学習済みの重みは本サイトでは配布していません。 データセットとモデルの出典・ライセンスは データ・モデルについて を参照してください。